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今年は未曾有の天災のため、一時は八百屋でもスーパーでも野菜の品数が少なく、また値段が普段の数倍したこともありました。やっといつもの状態に戻りましたが、改めて店先を見回すと相変わらず形の良い野菜類ばかりが目に付きます。どうしても見た目の良さが珍重される昨今の風潮です。
先日、農業を営んでいる世話人さんが大根を3本持って来てくれました。二股、三股になってはいますが、根の部分は真っ白に張り切り、そしてあおあおと茂った葉はいかにもビタミンCたっぷりに見えました。
「和尚さん、うちの畑で採れた大根食べてよ、形は悪いけど・・・」
私にすれば、有難い大根です。ふろふきにしたり、千本に切って即席の漬物にしたら絶品ですから。
「おお、立派な大根やね、ありがとう」
私は当たり前に礼を述べたのですが、
「立派だなんて、嫌味言いなさんな、売り物にならんヤツですよ」
と言われます。
「いや、本当に立派な大根です。双葉が出た頃に今年は台風が多かったから、風と戦った強い大根なんでしょうね。かえってありがたいですよ」
「そうなんだよ、これは風に負けないように根を二股にしたり、三股にして頑張った大根だよ。でも、器量が悪いから出荷できないんでね。本当は私らもこういった大根こそ愛しいんですよ。これだって折角蒔いた種だし、大根自身がこれまで命を守り通したと思うと、形の良い大根とはまた別な思い入れがあるんだね。やっぱり和尚さんには解ってもらえたかね。嬉しいね・・・」
私は四国での修行時代、畑仕事もさせていただきました。40人もいる修行僧全員に供するには小さすぎる畑でしたが、季節ごとに色々な野菜を育てました。もちろん無農薬ですから、虫が次から次に出てきて野菜に取り付きます。キャベツについた青虫をはしでひとつひとつ取り去る作務を朝から晩まで徹したこともありました。収穫されたキャベツは瑞々しくて、独特の香も甘みもあり、こんな美味いものかと噛み締めながらいただいたものです。
ですから二股になった大根も曲がったキュウリも経験から知っているのです。すべてが手塩にかけた人の作品です。
このような野性味のある力強い野菜を店先で安く売ると良いと思うのですが、日本の商業ベースでは日の当たらない存在になってしまうのがとても残念です。欧米では不ぞろいの野菜でも果物でも大威張りで店に並べています。それが作物としての自然の姿と認められているのでしょう。
お母さんは子供を連れて買い物に行って、もしこんな大根を見つけたら「なぜ、この大根は二股になっているのか知っている?」と子供に質問してみましょう。「この大根は風にも雨にも負けないように、抜けてしまわないように、土の中ですごく頑張ったの。一本の根っこじゃ力が足りないから、もう一本根っこを出して頑張ったのよ。とても強い大根だから、食べると元気が出るのよ」と伝えれば素晴らしい実地教育ができるのではないでしょうか。実際、私もそう思うのですが、お百姓さんによると、二股・三股の大根の方がおいしいのだそうです。
大根がだんだんおいしくなる本格的な真冬が近づいています。野菜もそうですが、魚介類も旨みを増し、冬はなかなかいい季節です。
一玄 合掌
平成16年12月15日
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